ホンサナエ

♂　1993.5.20
ゴールデンウイーク前位から現れて、六月には姿を消してしまうサナエ。胴体が太く寸詰まりになっていて、明らかに他のサナエとは違う。サナエモドキと名乗っていた頃は、その辺の川に沢山いたと云うが、ホンサナエと改名してから急に減りだし、見つけるのは至難の業となった。ホンサナエは、ずっと憧れのトンボだった。小さい頃から名前だけは知っていて、母親のお古のポケットサイズの図鑑に「青白いさなえもどき」として載っていたのを覚えているが、本物にはずっと遭えずにいた。

♀　1994.5.31

　1993年5月、僕はとある川を訪れた。その日はアオサナエを見ようと、いつも見るポイントよりも上流の方へ足を伸ばしていたが、そのあたりで一頭のサナエトンボの影を見た。それは一瞬のことだったが、腹部が太く見えたので、もしかしたら幻のホンサナエかもしらんとそこら中を探し回った。結局二、三頭のアオサナエ以外は何も見あたらなかったので、しかたなくその日はあきらめ、観察ノートには「ホンサナエらしき影を目撃」とだけ記した。しかし、何ともあきらめがつかず、翌日は家内を連れてまた前日のポイントへ行ってみた。
　何頭かのアオサナエが見られたが、内一頭はどうも少し感じが違った。撮影しようとしたが、遠くからのショットしか撮れず、すぐに逃げられてしまった。とりあえず車まで戻ったが、変な胸騒ぎがして、今度は少し下流の方へ行ってみた。その時なぜか僕は、多分ここにホンサナエはいるだろうと、一種の自信を秘めて車を降りていった。

　少し川を下った所で、砂利の上に止まっている一頭の青白いサナエが目に留まった。一見コサナエに似ているが、胴が太く寸詰まりの感じがする。

　紛れもなく、憧れのホンサナエだった！

　二、三枚写したところで、ホンサナエはその場から飛び去ってしまった。車に戻りホンサナエがいた事を家内に伝えると見に行くと言うので、もう一度橋の袂に向かった。運良くまた同じあたりにいたが、図太いからだの割にすばしっこく、川面を飛び回ってこちら岸に止まったかと思えば、あちらの岸に逃げるといった具合。僕が悪戦苦闘していた間、家内は網を持って元の岸辺に立っていたが、そちらにも度々ホンサナエが行っていたので後で聞くと、これと同じのが上流の方にもいたと言う。果たして、その日あがってきたプリントを見ると、上流の方で遠くから撮ったサナエもホンサナエだったことがわかった。

ホンサナエ写真集

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