マイコアカネ

浜松に住んでいた中学一年の秋のこと。桶ヶ谷沼のことをテレビで見て是非行ってみたくなり、父にせがんで車で連れていってもらった。ところが、桶ヶ谷沼の場所が良くわからず、結局それらしい大きな沼に着いたが、そこは本当は桶ヶ谷沼の近くにある鶴ヶ池という沼だった。
　岸辺の湿地状になっている所にトンボがたくさん見られたが、一番多く目に付いたのはアオイトトンボの一種で、彼らは集団になって産卵をしていたのだった。ヤゴをすくおうと持って来ていた水網で捕まえてみると、良く見かけるオオアオイトトンボとはどこか違う。それは今では、珍種中の珍品、コバネアオイトトンボだった。
　アカトンボもたくさんいたが、見かけない小さなアカトンボがいたので捕まえて調べてみると、マイコアカネのメスだった。図鑑には珍しいトンボと書かれていて、大いに満足したのだった。

　青白く美しいオスの顔面を、舞妓の化粧した顔にたとえたのが、和名の由来と聞く。